wasuremono60のブログ

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ミステリと言う勿れ・・・見事なお説教

 原作の漫画は、ドラマ視聴の後で、無料の巻のみ読みました。基本的には登場人物も、設定も同じでした。最初に不満を言います。BGMがひどい。演出はどう思っているんでしょう。安っぽい演劇って、「今は感動場面ですよ」っていう音楽の使い方をするのですが、まさにこれ。役者の演技力で十分表現できているのに、無音(無BGM)恐怖症なのか、不必要な音楽が多すぎます。脚本や役者の力量を、きちんと評価できないのでしょうか。


 音楽を別にすれば、本当に面白いドラマでした。ひとえに、田村由美さんの原作がしっかりしているからなのでしょう。何と言っても、「久能整」という主人公の造形が出色です。良いドラマは、人物造形の出来が、必要十分条件なのですね。最近のドラマ(特にTV)の主人公って、ここだっていう場面で、不自然につぶやいたり、動きの「くせ」をわざとらしく見せませんか? せめてやるなら、コロンボ警部(ピーター・フォーク)のように「自然に」やってくれ! ところが久能整君は、相手の動作を無意識のうちにまねるという癖は別にして、そんなわざとらしさを感じさせません。菅田将暉の演技プランが、本当に的確です。主人公を見るだけでも楽しいのに、周到なストーリーが用意されているのですから、面白くないわけがないです。


 そして主人公のセリフが、本物のお説教であり、胸が打たれます。
 子育てに対して、「正しく育ってる。これがいくつになっても父親べったりでお父さんのお嫁さんになりたいとか母親べったりの息子とかだったら、そっちのほうが失敗なんです。」
 イクメン刑事に対して、「メジャーリーガーは子供の成長に立ち会うことを父親の権利だと思い、日本側の解説者たちは義務だと思ってる。そこには天と地ほどの差があるんですよ。」
 殺人に対して、「今は殺しちゃいけないってことに、まあなってますけど、一たび戦時下となればいきなりOKになるんですよ。それどころかたくさん殺したほうが褒められるって状況になる。そんな二枚舌で語られるような適当な話なんですよ。」
 いじめに対して、「どうしていじめられてる方が逃げなきゃならないんでしょう。欧米の一部ではいじめてる方を病んでると判断するそうです。いじめなきゃいられないほど病んでる。だから隔離してカウンセリングを受けさせて癒すべきと考える。日本は逆です。」


 挙げればきりがありませんが、いちいちお説ごもっとも。常識に対して、カウンターパンチをビシバシ浴びせてくる主人公に、痺れました。主人公の推理の能力だけなら、ここまで魅力を感じなかったでしょう。お説教が、少しもお説教臭くない(BGMは置いといて)ドラマ作りが、見事でした。


 最終回は、明らかに「続編あり」という終わり方でした。続きを楽しみに待ちましょう。