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くれなずめ

 映画「くれなずめ」の感想です。松井監督の映画は所見です。見終わって、「これは好き嫌いで評価が分かれる」典型的な映画だと思いました。自分としては、面白かったです。舞台劇を映画化したと知って、納得しました。たいへん演劇的な映画なので、演劇の好き嫌いと、この映画の評価が相似するのではないかとも思います。


 僕の個人的な理解ですが、演劇的というのは事件が起きないという意味です。事件は起きないが、登場人物の心の動きを見せる表現を演劇的と考えます。演劇における物語が、登場人物の心を見せるものだとすれば、映画の物語は、事件や発生した出来事を解決していく過程を見せるものだと考えます。もちろん明確に線引きできるものではありませんが、おおよそそんな風に考えます。


 そもそも観客の想像力にゆだねる演劇で、大事件そのものを起こすことは難しいです。シェークスピアのように「森が動いた」と言っても、すべての人には受け入れられないでしょう。しかし「指輪物語」のように、映画なら森をリアルに動かせます。想像力にエネルギーを使うことに、快感を感じるか感じないかの差です。


 「くれなずめ」は、死んだ仲間を受け入れるまでの青春物語です。死んでいる親友が登場しますが、幽霊というよりはリアルな感じの登場の仕方なので、途中まで死んでいるとはわかりません。しだいに死んでいるんだとわかります。エピソードは、仲間が生きていた時のもので、死んでからは事件らしい事件は起きません。


 「豪華キャストなのにもったいない」と感じた人もいるようですが、セリフはなくてもよく心模様を表現してくれてました。傑作ではありませんが、気恥ずかしい青春時代への郷愁に共感しました。そもそも誇れるような青春時代を過ごした人には、何が面白いのか理解できないかも。