wasuremono60のブログ

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くれなずめ

 映画「くれなずめ」の感想です。松井監督の映画は所見です。見終わって、「これは好き嫌いで評価が分かれる」典型的な映画だと思いました。自分としては、面白かったです。舞台劇を映画化したと知って、納得しました。たいへん演劇的な映画なので、演劇の好き嫌いと、この映画の評価が相似するのではないかとも思います。


 僕の個人的な理解ですが、演劇的というのは事件が起きないという意味です。事件は起きないが、登場人物の心の動きを見せる表現を演劇的と考えます。演劇における物語が、登場人物の心を見せるものだとすれば、映画の物語は、事件や発生した出来事を解決していく過程を見せるものだと考えます。もちろん明確に線引きできるものではありませんが、おおよそそんな風に考えます。


 そもそも観客の想像力にゆだねる演劇で、大事件そのものを起こすことは難しいです。シェークスピアのように「森が動いた」と言っても、すべての人には受け入れられないでしょう。しかし「指輪物語」のように、映画なら森をリアルに動かせます。想像力にエネルギーを使うことに、快感を感じるか感じないかの差です。


 「くれなずめ」は、死んだ仲間を受け入れるまでの青春物語です。死んでいる親友が登場しますが、幽霊というよりはリアルな感じの登場の仕方なので、途中まで死んでいるとはわかりません。しだいに死んでいるんだとわかります。エピソードは、仲間が生きていた時のもので、死んでからは事件らしい事件は起きません。


 「豪華キャストなのにもったいない」と感じた人もいるようですが、セリフはなくてもよく心模様を表現してくれてました。傑作ではありませんが、気恥ずかしい青春時代への郷愁に共感しました。そもそも誇れるような青春時代を過ごした人には、何が面白いのか理解できないかも。


アバランチ

 ドラマ「アバランチ」が終わりました。正直に言いますと、フジテレビのドラマとは相性が悪いというか、好みに合わないことが多いのですが、「アバランチ」は面白かったです。ただし放映はフジテレビですが、制作はカンテレ(関西テレビ)なので、相性は悪いままなのかもしれません。


 アバランチとは「雪崩」のことだそうです。第1回のタイトルでしたが、内容的には最終回こそが、アバランチ「雪崩」でした。警察内の陰謀組織を、警察内外の別組織「アバランチ」が壊滅させるという定番ものです。ネットでは賛否が分かれたみたいですが、私は十分楽しめました。


 まず、キャスティングが良かった。ドラマって必ずと言っていいほど、「合ってない」って思わせる役者さんが登場するものですが。このドラマはそれがなかった。それからどんでん返しの、タイミングが良かった。「あの人」が実は、味方だったり裏切者だったりの展開が、よく計算されていたと思います。アクションには興味はありませんが、アクションシーンが好きな人は楽しめたはずです。


 ネットで多い不満は、日本版CIAを作ろうとしていた、悪役の大山官房副長官の「動機が不明」というものでした。主人公サイドの動機は大切ですが、悪役の動機は求め過ぎでは?って思います。少し話は違うかもしれませんが、宇宙人の地球侵略ものに、いちいち動機なんて求めないですよね。もちろんすべての悪役に動機が不要、とまで言うつもりはありません。


 振り返ると、いろいろな要素が詰め込まれているにもかかわらず、話はシンプルでわかりやすい。大勢の脚本家、監督、プロデューサーによる共同制作ってことは(もし違っていたら恥ずかしいですが)、「チームで知恵を出し合って作った」作品のような気がします。これは誉め言葉です。
 
 綾野剛さんは、脂がのっている役者さんの一人です。30代前半をこつこつ地味に積み重ねてきて、後半は爆発しました。TVに映画にひっぱりだこですが、40歳を迎える来年は、さらなる成功を収めそうです。


二月の勝者-絶対合格の教室-

 これも未読ですが漫画原作のドラマです。受験といえば「ドラゴン桜」が有名ですが、こちらは「塾」が舞台です。考えてみると、塾が舞台って盲点でした。あまたの学園ものがある中で、なぜ塾が今までなかったのでしょう? 日の目を見なかった塾が、満を持しての登場です。


 まず、個人的には毎回とても楽しみにしてますが、あえて文句から始めます。繰り返しますが漫画は未見なので、TVドラマのみの感想です。
 文句、それは「ブルーミング」という個人塾の存在を、あっさりばらしてしまったことです。当初は仕事を終えた主人公が、怪しげな風俗街に繰り出すシーンをちらつかせるにとどまっていました。これにより主人公の怪しさが、この上なく増幅されました。昼間の校長では善き人を演じながら、実は暗黒面を持つという二面性を上手に表現していました。


 それが3回であっさりネタバレ。確かに善き人としての主人公設定を確定することで、安心して視ることはできるでしょう。でも、あきらかに楽しみが減りました。あとは主人公がいかに善き人かを、繰り返し見せるだけです。ルトワックの灰谷先生の存在意義が、このままだと消滅してしまいます。本当に、もったない。「悪魔のような鬼教師」を引っ張りまくって、ついに名作になった?!「女王の教室」に迫ったかもしれないのに!、と勝手に邪推するばかりです。 


 名作への階段は踏み外したかもしれませんが、それでも面白いことには変わりません。毎回のテーマは子供の問題のようで、実は親の問題でもあり、この二つをいかに解決・解消していくかというストーリーがわかりやすい。そして最後の暖かい終わり方と、エンディングの「沈丁花」が心地よいです。残りわずかですが、井上真央をはじめ講師陣に、もう少し活躍の場を期待したいかな。